借金の時効援用は慎重に
ときどき、次のような相談をお受けします。
今から6年程度前まで、消費者金融や、カード会社にリボ払いしていました。
それから、もう5年以上、借りも払いもしていません。
時効援用して、JICCやCICの滞納情報を消してもらうことはできませんか。
このご相談については、残念ながら、
基本的には、やめたほうがいい
(寝た子を起こすな)
という回答になります。
というのは、払わなくなってから5年経過しただけでは、次のような最高裁判例があるため、分割金全部について、必ずしも時効が成立しないからです。
最近、消費者金融やカード会社は、リボ払いの支払いを怠っても、当然に全額弁済にならない(期限の利益喪失とはならない)条項のものがあるからです。
昭和40(オ)886 貸金請求
昭和42年6月23日 最高裁判所第二小法廷 判決
割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があつても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨み意思表示をした場合にかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解ずべきである。
時効の援用には、最終回の支払期限からか、または債権者からの催告がなくても期限の利益を失う約束になっていて、全額の弁済義務が生じてからか、のいずれかから5年以上経過していることを確認する必要があります。
それでは、時効援用通知を出すことが、やぶ蛇となるような事例を挙げてみます。
(7年前)
2014年1月 滞納しても、請求があるまでは期限の利益が残る約束で、
36回払いのリボ又は分割払いで、借り入れ又は物品購入。
(2014年2月から2017年1月まで36回払)
(6年前)
2015年1月の支払いを最後に、借入れも支払いもしなくなる。
(6年経過)
(現在)
2021年1月時効援用
しかしながら、この時点で5年を経過していない、
2016年2月から2017年1月までが支払期限の分割金
1年分は、時効消滅せず、支払い義務が残る。
上記の昭和42年の最高裁判例は、何もしない債権者が有利になるので、批判も可能ですが、現状は、以上のとおりの考えとなります。
以上