相続対策3 遺言
1 遺言の必要性
相続人となる予定の人が複数いる場合、
自分が亡くなった後、
相続人たちの間で、財産相続をどうするかについて
話しがつかないことがあります。
子供たちによる遺産相続の争いは、
防止しなくてはなりません。
また、特に、
結婚しているがお子様がない方で、
自分の兄弟や甥姪よりも、結婚相手の
生活が心配な方、
と
内縁の妻や、複数の異性との
付き合いが会った方で、
法律上結婚していない人に
財産を残したい方、
は、遺言を書くことが不可欠です。
2 遺言の際に考えるべきこと
まず、自分の財産で、
自分がどのような生活をするのか、
自分の介護、療養、生活にどれくらいの
財産が必要か、計算する必要があります。
年に応じて、財産、特に現預金は、徐々に
減っていくでしょう。
次に、財産を受け取る人の生活を考えなければなりません。
結婚していて生活が豊かか、
子供は孫の学費を負担できるのか、
家を持っている子供か、
事業のために資産を受け取る必要があるのか
等、子供たちの生活のために、何ができるのか、
考慮する必要があるでしょう。
また、
争いを防止するためには、
子供の遺留分は確保できるようにしておく
必要があります。
遺留分は、子供、配偶者、(親にも)の
法定相続分の半分です。
なお、遺言を書く目的を
自分のやってきたことを引き継いでもらうため、
とする考えもあるかもしれません。
しかし、
死んだ過去の者に縛られることは、
残された者の選択を歪めることになるので、
余り好ましいことではないと思います。
3 遺言に書くべきこと
どの財産(土地、株、預金、現金、貴重品)を
どれに相続させるか、又は受け取ってもらうかを
明確に書く必要があります。
預金や不動産を相続人以外が受け取る場合には、
その手続を実施する遺言執行者を指定しておく
必要があります(民法1006条)。
遺言執行者を指定しておかないと、
後で、家庭裁判所に遺言執行者の選任の
申し立てが必要になるので、面倒です。
(民法1010条)
財産だけでなく、負債もある場合、
その負債をどのように処理するかも、
希望を書いておいた方が良いでしょう。
負債については、
債権者を保護するため、
遺言や、相続人間の話だけで、
相続人中の誰かだけを債務者とすることは
できません。
相続人の誰かだけを債務者とするには、
負債の債権者の同意が必要です。
4 遺言の書き方
(1) 一般的な遺言
普通の方式の遺言には
自筆証書遺言(民法968条)
公正証書遺言(民法969条)
秘密証書遺言(民法970条)
があります。
ある程度以上の資産がある方が、
相続人数人に、適切に財産を
割り振ることは、結構難しいことです。
このため、
財産の特定や評価の調査を弁護士に任せて、
財産を明確にして、
弁護士を遺言執行者に指定して、
公正証書遺言を作ることが、
もっとも適切でしょう。
全部を妻に相続させる
という程度の遺言であれば、
全文と作成日と署名を自筆で書いて、
印を押しという自筆証書遺言でも
良いかもしれません。
(2) 特別の方式の遺言
民法976条から984条に特別の方式の遺言が規定されています。
伝染病や船旅中ということは、今では、
考える必要はないかもしれません。
あるとすれば、死にそうで、自分で筆記できない時の方法でしょう。
この場合、976条の方式で、3人以上の証人を集めて、
20日以内に家庭裁判所に確認の申し立てをする必要があります。
死期が近いと思った時に、弁護士を呼んで、
証人や家庭裁判所への申し立てを準備してもらって、
遺言を口で述べることになる
のではないかと思います。
5 遺言は、見直しが必要
自分の能力は徐々に落ち、
収入の少ない生活とともに、現預金は減っていきます。
子供たちの生活も徐々に変わります。
子供の事業がうまくいくこともあれば、
孫の数も変化します。
不動産や株の価格も時の経過とともに
大きく変化します。
すると、少なくとも数年毎には、
遺言の見直しが必要になります。
ある子供に郊外の自宅不動産を
相続させようとしていても、
その不動産が高騰すれば、
他の子供の遺留分が確保できなく
なることもありえます。
他の子供に残そうとしていた
現預金が、療養でなくなることもあります。
ところが、
自分が、ボケてしまっては、
遺言書は書けません。
成年後見人がつくような状態になった場合、
原則として、遺言書は書けません(民法973条)。
また、ボケた状態での遺言書は、
後で有効無効が争われることが良くあります。
ボケるなと思った時には、
修正は無理になります。
6 遺言は難しい
子供たちの争いを防止するために
遺言をするとしても、
自分がいつまで生きるかは分からない
時とともに、いろいろと変わる、
ため、適切な遺言書を
書いておくことは、以上のように、
結構難しいことです。
遺言とその前の高齢になってからの生活は、
当事務所等、法律の専門家の意見も
聞いておいた方が良いと思います。